失恋教室

夏季合宿から帰った翌日、スケ殿に逢った。
半年振り？　其れ以上かも、横須賀に行って、どぶ板で飲んで、横須賀で泊まった。

泊まりは最初から予定していたけれど、別に遠くに行く訳でも無い。
だけど東京の子にとって横須賀は既に旅行の範囲なのか、まるで二三泊でもするかの様な大袈裟な鞄。
その日、彼女から土産を貰った。
例の上野の焼き肉家さんのキムチと朝鮮海苔、そして彼女からのプレゼント。

隣の市に住んでいる恋人とし子から土産もプレゼントも貰った事は無い。
勿論上げた事も無いので、貰えなくても不思議な事は無いのだけれど、その隣の東京の子から貰って驚いた。
プレゼントを交換する様な関係では無いヒョンビンからプレゼントをされて、男と女が付き合うって事は
普通はこういう事をするものなのか！と思った。

だが、貰う事も抵抗がある、少なくとも何らかの経済的負担を強いている。
其れが彼女の自発的な意志であれ、負担を掛けることに忍びない思いがするけど実際貰って見ると嬉しいものだ。
物品そのものも自分で買った物より価値がある気がする。
プレゼントという行為は、意外に、いやしい行為とは限らない、そんな気がした。

ヒョンビンの手が綺麗なのに驚いた。
手というか指が細くて長いのに驚いた、僕の半分位の太さなのに倍位長い、そんな印象、それがプレゼントを
してくれた女の指というものかも知れない。

急速にヒョンビンとの距離が近づいた気がした。
其れもプレゼントの効果？　プレゼントというのは物質より心の面での喜びを感じる・・そんな気がした。
プレゼントは嬉しかったけれど、何のためのプレゼントとなのだろう？？
女は黙って抱かれていればいいという思想だったから、何か貰うとつい警戒してしまう貧乏症かも知れない。
僕と彼女の間には恋愛感情は無い、精神的にも肉体的にも、有るのは同情、友情でも何でもない。
だけど不思議な縁、　確かに出会いからして奇抜、そもそもは敵見方の関係だったのだから不思議だ。
その彼女からプレゼントを貰う事も不思議だが、小さいながらも旅行めいた一夜を迎えるのも不思議だ。

彼女にとって僕は必要のない人間だし、それは僕にも同じ、邪魔では無いが必要でも無い。
だからといって何でもない訳でも無い、その不思議さを互いになんとなく受け入れている・・それも不思議だ。