失恋教室

その夜は歓迎を兼ねたホームパーテイをやろうという事になった。
で、どう言うのがいいかと話し合った結果、関西風すき焼にしようという事に。

実は関西のすき焼と言うのは知らなかった。
というか、すき焼と言うのは関東の料理だと思っていたから、関東のすき焼きが広まっているのだと思っていた。
処が、関西のすき焼は全然別物？という感じ、初めて食べた時は”此れはすき焼では無い！”と思ったほどだった。
関東のすき焼は醤油、みりん、料理酒、砂糖、水などを合わせた“割りした”で肉や野菜をいっぺんに煮る。
最初に割りしただけ煮立て、初めにネギ、あとは適当に野菜、最後に肉を煮るという感じ。
野菜類はしらたき、豆腐、ネギだけで、割り下も、途中で加えず煮詰まったら水を差して薄めるだけだから簡単。

処が関西のは最初に肉を焼き、醤油・砂糖などで味付けし、その後に野菜を入れる。
溶き卵につけて食べるのは共通だけれど、割りしたは使わず、酒や水で調節する。
素材の味を重視する傾向のある関西では、まず肉だけを堪能してから野菜を食べる。
肉を牛脂を塗った鍋で焼いたら砂糖適量、醤油、みりん、昆布ダシなどを注ぎ入れ、肉が食べ終わった後で、
ネギ・豆腐・シラタキだけでなく、玉ねぎ・椎茸・タケノコなどの具を入れ再度肉を投入し、一気に煮込む。
つまり二段方式、最初は肉だけのシンプルな味、二度目はごちゃ混ぜで何が何だか分からない味。
その辺が関西らしいという感じがする。

すき焼きと言うのは農民が農耕具の鋤（すき）の上で肉を焼いて食べたことが始まりなのだそうだ。
と言う事からすると語源的にはＢＢＱに近いから、関西式の第一ラウンド目のが正統なすき焼きかも知れない。
関東では関東大震災あたりまでは“すき焼き”と呼ばず“牛鍋”と呼んでいたらしい。
農民が農耕具の鋤（すき）の上で肉を焼いて食べていたというすき焼きは江戸時代らしいから、そうなると
歴史的にも関西の方が本物なのかも。
只、江戸時代の百姓が食べていたという肉は何の肉だったのか？　そこの処がイマイチ怪しい気もするのだが。

奥さんも関西風の食べ方は初めてらしく、二段階で食べる食べ方を面白がっていた。
関東と関西では味付けとか具とか、結構違う。
関東でも関西から来た物は関西的なまま受け入れているけれど、元々関東に有った物は矢張り関東味、
関西味というおは概して関東に比べて甘過ぎて、男には食べ難いけれど女性には食べ易いのかも知れない。

歓迎を兼ねたホームパーテイの献立をすき焼きにしたのは他にも理由があった。
実は、女性と一緒に牛肉を食べると、格段に下半身が元気になるという習性がある。
恐らくは良質の蛋白質が原因なのだろうが、他の食品に比べて顕著に元気になる事が計算に織り込まれていた。
精液も蛋白質だ。
普段は殆ど放出する事の無い蛋白質だけれど、この先暫く連日放出する事になる！と思うと、その補充がいる。
十分な放出をする為には十分な補充がいるし、十分な放出が無くても十分な補充が無くても彼女は帰ってしまう。
折角のバカンスに来たのに、失望させては申し訳ない。
ま、そんな思いがあってその夜はすきやきパーテーという事にあいなったという次第だった。