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「遥かなる山の彼方に」 4 死の匂いのする壁(9)

晶子の全身にビリビリッと雷の様な電撃が走った。
岩で肉塊が焼ける死の匂いがした。
 二人のザイル距離は十七米、途中に二枚のカラビナが架かっているが、確実に二十米は飛ぶ。
途中の二本のピンが天城の墜落を支え切れるか…。
 目の前が真っ白闇になりそうなのを必死で堪えてダイナミックビレイを構える晶子、その晶子が凝視する視界に天城の残影が消えない。
 本体は何処へ行った?
 とっくにザイルに伝わって来る筈の衝撃も無い。
ザイルが切れて谷底にとんだ?
晶子は真っ青になった。

「ヤベエ、ヤベエ・・・」

 天城の残影から声がした。
 ????、晶子は一瞬何が何だか分からなかった。
 天城は落ちなかった?
晶子はザイルを目で手繰った。
ザイルは途中に二つのカラビナを絡ませ確実に自分と繋がっていた。 
 あの強腕・・・天城が落ちたのは事実の筈だが、あの腕力も事実である。
晶子は第四尾根で大蛇の様に自分を締め付けたあの腕を思い出し、何度も横に振った。

 天城は極端に体を壁から離す独特なクライミングフォ-ムを採った。
 この微妙なフエ-スクライミングに適したフォ-ムとは言えないが、天城は最も得意な体型でこの微妙な難局をクリア-しようとしていた。
その天城がザイルを流せと喚(わめ)いでいる。
ザイルが流れない。
晶子はハッとした。
 墜落に備えたダイナミックビレイで晶子の手指は緊張の余り完全にロックされていた。 流しているつもりのザイルが握り締められたままだった。
晶子はコンクリ-トの様に固まった指を口で一本一本外した。
その様子を眺めていた天城が笑っていた。
天城は指先で掴んだ凹凸にぶる下がっているままなのに、なんで笑っているのだろう。
緊張しているのは当の天城ではなく自分の方だった。
晶子は大声で「御免!」と叫んだ。

 ザイルが流れ出すと天城は独特のフォームを見せながら、やっとのことで残りのフェ-スをクリア-してやっとチムニ-へ逃げ込んだ。 
そしてチムニ-の中で両手両足をブルブルっと下げて震わし、筋肉の緊張を解いていた。
やはり微妙なフェースでの繊細で絶妙なバランスの登攀は苦手らしい。

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Author:ひろあき
振られる度に、もう恋なんかと何度思ったことか。相手にされないのも寂しいけれど、引寄せられてからストンと捨てられるのはもっと痛い。振られる度に臆病になって、此れは恋では無かったのだと慰める。傷つかない偽りの恋しか出来なくなっても恋は恋、小さくても偽物でも恋は至福です。

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