失恋教室

久しぶりに秘密基地へ行った。
やっぱりコートが無い季節の方がいい。
「松葉」もいいが、「基地」はもっと気持がいい。
「松葉」は温室で、「秘密基地」は屋外の花壇という感じで、同じＴｏｋｏだけど別のＴｏｋｏに感じる。


「松葉」には感謝している。
「松葉」のお陰で仲直りしたし、「松葉」のお陰で彼なる人物は略完全に抹殺した。
「松葉」のお陰で財布はいつも寂しいし、「松葉」のお陰で残業代も稼げないけど、「松葉」はそれ以上のものを与えてくれた。

幅四十センチの堰堤にとし子を寝かせて、覆いかぶさった。
一寸意地悪して、本当に此処で抱かれる気かどうか試してやった。
胸元からお腹の辺りまで繋がったチャックのあるワンピース、あたかも脱がし易いように着ているようにも思える。
そのチャックを引きおろしたら、シミーズと隠れたブラジャーが夕闇の中に浮かんで見えた。

多分、Ｔｏｋｏは抱かれるつもりでいる。
多分、此処で全裸にされることも覚悟している気がする。
ゴルフ場での事を今、此処で決着しようと思っている気すらする。

Ｔｏｋｏに重なって、ヤッパリ此処は危険だと思った。
何度もしているなら出来るかも知れないけど、初めてじゃとても無理だ。
土手側に落ちれば五十センチで済むけど川側に落ちたら確実に十メートル下の川に落ちる。
此処は無理だったと分かって貰えればいいのだが、又、棄権したと思われたら元も子もないので、直ぐに引き起こした。
少し怪訝な顔をしていた。

すっかり暗くなりかけた川面を見ながら寄り添った。
対岸に見えるゴルフ場は目にどんな風に映ったのだろう。
夏までに抱くと明言した。
それで納得したかどうかは分からないが、Ｔｏｋｏは何も言わなかった。

ゴルフ場の件は気になる事だが、それはもう許したことだし、或いはＴｏｋｏの方が許したのかも知れないから、
もう穿らない方がいい。
なんでもかんでも彼と関わりがあるのかと疑ってしまうのはよく無いけど、それだけ彼のことが気がかりなのだろう。
もう彼とは会ってないとは思うが、もう会わないのかどうか、それが中々聞けない。
彼とは何処まで行ったのか、それはもっと聞けない。
何故何時までもＴｏｋｏを抱かないのか・・・、本当はそのせいかも知れない。