失恋教室
女性は恋に生きるものだから悲しい恋も絵になるけれど、恋しても恋しても捨てられは捨てられている男って、只、恰好悪いだけですね。
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Toko争奪戦
夏の頃からTokoの異変を感じていた。
化粧が厚くなり香水が鼻を突く。何となく怪しい。
係長のシモネタ話にも耳を赤く染める様になったし、影に男の存在の気配を感じる。
社内にはTokoに接近している男がいる様子は無い。毎日見ているから其れは確かだ。
単に子供から大人へ変る端境期だからなのかも知れない。
夏になって肌を露出する服になったせいか、体つきも大人っぽくなった様に見える。
それはいいのだが、化粧が濃くなったり、香水を振りまくのは感心しない。
化粧しなくても若いのだから十分綺麗だし、体臭がある様でも無いから只のデパートの化粧品売り場みたいな
匂いで職場には相応しく無い感じがする。
自分の女にする女としても、此処まで化粧臭い女は否だ。
夏の終わり頃から毎日一緒に帰る様にして、漸く男の存在を聞きだした。
やっぱり、男が存在していた。男の名前は花岡、中学時代の先輩らしい。
化粧臭くしているから、相手の男は中年の親爺かも知れないとも思ったけど、そうでなくて良かった。
誰であっても狙っている女を横取りされては敵わない。
相手は中学から付き合っているのなら、相手から見れば横取りするのはこっちかも知れないが、兎に角、
Tokoは入社した時から直感した女だから、人にやる訳にはいかない。
ましてや、毎日目の前で目にする女が他の男に抱かれているのを想像するのは精神衛生上も堪らないし、
第一仕事に専念できなくなる。
問題は何処まで付き合いが進んでいるのかだ。
いつもは川崎駅まで一緒同乗するだけだったのを、乗り換え支線の駅の改札まで送ることにした。
川崎駅から支線駅までは徒歩5、6分だけど、Tokoは一緒に歩くのを嫌がっていつも数メートル先を逃げる様にして歩く。
多分、その彼氏とかいう男に見つかるのを恐れてのことだ。
何処まで関係が進行しているのかは不明だけど、徒歩5、6分の距離は毎日僕に浪費させるのだから、僕がTokoに
接近しようとしているのは感じている筈だ。
いつも数メートル先を逃げる様にして歩くとし子も電車の中では普通か普通以上に接近しても普通にしている。
それ以上接近すると顔も体も背けてしまうが、それは単に公衆の面前だから恥ずかしいだけかも知れないし、
貴男との距離では無いと言っているのかも知れないが、いずれにしても彼氏との距離は俺より近い事は確かだ。
今日、ボーリング大会の後の飲み会で少し酒が入っていた。
酒を勧めた係長や副主任の方が先に酔っ払っていたから、とし子は結構いける口なのかも知れない。川崎に着いて
酔い覚ましに少し歩こうと言ったら承知してくれた。
毎日送っていた効果が少しはあったみたいで、彼氏との距離に一歩か二歩近づいた気がした。
とは言っても、例によってとっとと先を歩く。
Tokoが追いつくのを許したのは辺りに人影が無くなった土手、つまり、人に見られなければ横を歩いても
いいという事だから、大分彼氏に追いついて来た感じだ。
河原でTokoに静かに背後から接近して、肩を抱いて引き寄せた。
Tokoも危険な気配で感じて、あれあれ、あれは何?と背を向けて言う。
多摩川を渡っている電車だ。それを地物のとし子が知らないわけが無い。
とぼけたことを言って気を逸らせようとする仕種が可愛らしかった。
力ずくで振り返らせて強引に唇を奪った。
凄く抵抗された。顔を押さえつけて、抵抗が完全に無くなるまで長いキスをした。
攻防の間、手に持った空の弁当箱がカラカラと鳴っていた。
多摩川を渡っている電車のゴウゴウという響を何度も聞いた。
完全に抵抗が無くなってから、改めてTokoを強く抱きしめて深いキスをした。
もう、Tokoは抵抗しなかった。
もう、Tokoは観念したという感じだった。
Tokoの唇はとても小さい感じだが、思ったより美味しかったので、何回も吸った。
互いに口は利かなかった。一言の会話もしなかった。
キスの集中砲火を浴びたとし子は怒ってはいない感じだけど、少し悲しい顔をしていた。
駅に戻る途中、暗い道ではとし子の腰を抱き寄せる様にして歩いた。
又、数メートル先を逃げるように歩くのかと思ったけど、街明かりの中に入り始めても嫌がらなかった。
行きとはまるで違った。彼氏に見つかったら大変な筈ではなかったのか。
キスの効果は覿面だったみたいだ。
彼氏との距離を越えたと思った。
もう彼氏から奪い取ったも同然と安心したら、駅前の明るさに入った途端、とし子は突然に駅に走り出した。
数メートルどころか、三十米は引き離された。
まだまだだった。
化粧が厚くなり香水が鼻を突く。何となく怪しい。
係長のシモネタ話にも耳を赤く染める様になったし、影に男の存在の気配を感じる。
社内にはTokoに接近している男がいる様子は無い。毎日見ているから其れは確かだ。
単に子供から大人へ変る端境期だからなのかも知れない。
夏になって肌を露出する服になったせいか、体つきも大人っぽくなった様に見える。
それはいいのだが、化粧が濃くなったり、香水を振りまくのは感心しない。
化粧しなくても若いのだから十分綺麗だし、体臭がある様でも無いから只のデパートの化粧品売り場みたいな
匂いで職場には相応しく無い感じがする。
自分の女にする女としても、此処まで化粧臭い女は否だ。
夏の終わり頃から毎日一緒に帰る様にして、漸く男の存在を聞きだした。
やっぱり、男が存在していた。男の名前は花岡、中学時代の先輩らしい。
化粧臭くしているから、相手の男は中年の親爺かも知れないとも思ったけど、そうでなくて良かった。
誰であっても狙っている女を横取りされては敵わない。
相手は中学から付き合っているのなら、相手から見れば横取りするのはこっちかも知れないが、兎に角、
Tokoは入社した時から直感した女だから、人にやる訳にはいかない。
ましてや、毎日目の前で目にする女が他の男に抱かれているのを想像するのは精神衛生上も堪らないし、
第一仕事に専念できなくなる。
問題は何処まで付き合いが進んでいるのかだ。
いつもは川崎駅まで一緒同乗するだけだったのを、乗り換え支線の駅の改札まで送ることにした。
川崎駅から支線駅までは徒歩5、6分だけど、Tokoは一緒に歩くのを嫌がっていつも数メートル先を逃げる様にして歩く。
多分、その彼氏とかいう男に見つかるのを恐れてのことだ。
何処まで関係が進行しているのかは不明だけど、徒歩5、6分の距離は毎日僕に浪費させるのだから、僕がTokoに
接近しようとしているのは感じている筈だ。
いつも数メートル先を逃げる様にして歩くとし子も電車の中では普通か普通以上に接近しても普通にしている。
それ以上接近すると顔も体も背けてしまうが、それは単に公衆の面前だから恥ずかしいだけかも知れないし、
貴男との距離では無いと言っているのかも知れないが、いずれにしても彼氏との距離は俺より近い事は確かだ。
今日、ボーリング大会の後の飲み会で少し酒が入っていた。
酒を勧めた係長や副主任の方が先に酔っ払っていたから、とし子は結構いける口なのかも知れない。川崎に着いて
酔い覚ましに少し歩こうと言ったら承知してくれた。
毎日送っていた効果が少しはあったみたいで、彼氏との距離に一歩か二歩近づいた気がした。
とは言っても、例によってとっとと先を歩く。
Tokoが追いつくのを許したのは辺りに人影が無くなった土手、つまり、人に見られなければ横を歩いても
いいという事だから、大分彼氏に追いついて来た感じだ。
河原でTokoに静かに背後から接近して、肩を抱いて引き寄せた。
Tokoも危険な気配で感じて、あれあれ、あれは何?と背を向けて言う。
多摩川を渡っている電車だ。それを地物のとし子が知らないわけが無い。
とぼけたことを言って気を逸らせようとする仕種が可愛らしかった。
力ずくで振り返らせて強引に唇を奪った。
凄く抵抗された。顔を押さえつけて、抵抗が完全に無くなるまで長いキスをした。
攻防の間、手に持った空の弁当箱がカラカラと鳴っていた。
多摩川を渡っている電車のゴウゴウという響を何度も聞いた。
完全に抵抗が無くなってから、改めてTokoを強く抱きしめて深いキスをした。
もう、Tokoは抵抗しなかった。
もう、Tokoは観念したという感じだった。
Tokoの唇はとても小さい感じだが、思ったより美味しかったので、何回も吸った。
互いに口は利かなかった。一言の会話もしなかった。
キスの集中砲火を浴びたとし子は怒ってはいない感じだけど、少し悲しい顔をしていた。
駅に戻る途中、暗い道ではとし子の腰を抱き寄せる様にして歩いた。
又、数メートル先を逃げるように歩くのかと思ったけど、街明かりの中に入り始めても嫌がらなかった。
行きとはまるで違った。彼氏に見つかったら大変な筈ではなかったのか。
キスの効果は覿面だったみたいだ。
彼氏との距離を越えたと思った。
もう彼氏から奪い取ったも同然と安心したら、駅前の明るさに入った途端、とし子は突然に駅に走り出した。
数メートルどころか、三十米は引き離された。
まだまだだった。
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