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惜別  (安恵)

●新学期が始まった。
担任は又田中だった。
ガックリとした。
うんざりして、情けなくて、悔しくて、どうにもならない程憂鬱だった。

家に帰ったら、安恵に明日出て行くと告げられた。
脚がガウガクと震えて止まらなかった。
あの日以来、安恵を避けていた。毎日背を向けて一言も喋れなかった。
安恵が気にしているのは感じていたけど、まともに顔をみれなかった。

安恵は明日学校に行っている間に出て行くという。
止めることは出来ないのは判っているけど、こんなに別れが辛いとは・・。
安恵の新しい人生だ、祝って送り出してあげようと思っていたのに、無理だった。
ただただ黙って、怯えながらともし火が風に吹かれて消えるのを待つだけだった。

安恵に落ち着いたら遊びに来て欲しいと言った。
安恵は、はいと返事をしたけれど、絶対に来ないだろうと思った。
元々敵わぬ恋なのは分かっていた。
こればかりはどうしようも無いことも判っていたが、向かい合えば涙が止まらないだけなのも判っていたから、
目を見る事が出来なかった。

安恵の手を強く握って、大きく握手した手を振った。
安恵が、お元気でと言った。
たまらなくなって、二階に駆け上がった。

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ひろあき

Author:ひろあき
振られる度に、もう恋なんかと何度思ったことか。相手にされないのも寂しいけれど、引寄せられてからストンと捨てられるのはもっと痛い。振られる度に臆病になって、此れは恋では無かったのだと慰める。傷つかない偽りの恋しか出来なくなっても恋は恋、小さくても偽物でも恋は至福です。

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