失恋教室

11月２４日
芳兵衛のオエッについて、どう考えるか。
ペニスを咥える事を嫌がったわけではない許してあげるべきだ。
何だか似た様なことを前にも考えたことがある気がした。
そうだ、剣事件だ。

障子は穂高を愛していてくれればよかった。
剱も好きになったことから、ついに破局を迎えることになった。
障子が剱を好きになった背景に庭山さんへの憧憬がある。
なんと言うのだろうか、子供が母親を奪われた様な、底知れぬ深い悲しみだった。
今思えばその段階で禁じてあげればよかった。
それが悔いる結果につながった。
山川との人工登攀問題は・・しかし、其れはイデオロギーの問題、恋愛とは関係ない。
けれども、その闘争を通じて障子の気持ちの中に幾許かの山川への好意が芽生えたのも事実だ。
許してあげればよかった。
その段階で止めてあげればよかった。

傍にいた啓子にも迷惑をかけた。
啓子は剱の何の関係も無かったのに、障子の傍にいたために被災させてしまった。
今、思えば最大の被害者は啓子だった気がする。

芳兵衛が、吐くほどに気持が悪いのならもうよそう。
もう少し様子を見てみよう。
芳兵衛がどうしても嫌がる様だったら、其の時に考えよう。
一度だけの事で、許せないと感じてしまうのは学習効果が無い証拠だ。

又、佐藤さん？がやってきた。
不思議な人だ。
極めて不定期にやってきて体温を測ってついでに脈を測ってとっとといなくなる。
何を調べているのだろう。
当然医師の指示だと思うが、医師は巡回でも殆ど僕のところは来ない。
確かに外皮はえぐられ、肉がそぎ落とされてへっこんでしまったけれど、もう皮は付いている。
なんで佐藤さん？は来るのだろうか？不思議だ。

午後になって又、芳兵衛がやってきた。
持って帰った下着を洗って来てくれた。
遭難のときに来ていた服は結構血が付いていたらしく、落ちないと言っていた。
なるほど、岩に抉られた腰の辺りは結構広範囲で血の跡が付いていた。

夜、又、ベッドに芳兵衛をあげて交わった。
勿論周囲は気にしているとは思うけど、抱かれる事には何も躊躇いは無い様だ。
女は触らなくても濡れるという事に最近気がついた。

芳兵衛の愛液は少ない。
完全に安全な場所で抱いたことが無いからかも知れない。
今のところは芳兵衛の為に抱いてあげるという気持は無く、自分の欲望を満たす為だけに抱いている。
芳兵衛は女なのだから、男にやられるのは仕方ない。
女は与えられたものの中で生きる・・安恵さんがそう言っていた。

それにしても、お袋が帰ったのを見計らったかの様に、旨いタイミングで来るものだ。