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病院日記 10 (芳兵衛)

11月29日
お袋はあっさりと帰っていった。
お袋に「山賊焼」を食わせたいと思った。
しな野の川上さんの山賊焼は最高だ。

午後になって、また、芳兵衛、が来た。
まったく、どうしてこんなにタイミングよく来れるのだ。
実に奇跡としか言いようが無いけど、奇跡はそんなに長く続くものしゃない。
いつかは必ずぶつかる気がする。
お袋は反対していただけに、お袋とバッティングさせたくない。
妊娠しないのも、若しかしたら奇跡、だとしたらいつかは妊娠するだろう。
お袋は芳兵衛を抱くのに反対らいいが、抱くのを止めるわけにはいかない。
他の女なら止めてもいいけど、芳兵衛は特別だ。
僕が穂高を愛する限り、芳兵衛は僕にとって掛替えのない人だ。
僕が芳兵衛を抱くのを止める時があるとしたら、僕が穂高から離れる時だ。
それは山を止める時と言ってもいいだろう。

僕が穂高を離れる時があったとすれば、剱で別れた障子はどうなるのだろう。
障子と別れたことは、何の意味も無くなる。
別れた事を大きく後悔することになる。
僕は穂高を愛している。誰よりも何よりも、障子よりも。
僕が穂高を愛し続ける以上は僕にとって芳兵衛は大事な人なのだ。
だからと言って、芳兵衛を妊娠させるつもりは無い。
妊娠したらしたときの事、と思っていたけれど、妊娠させることを望んではいない。
その点ではお袋の考えとは一致する。
それに、遭難だ、へり代だと、大変な心配をかけているのに、ここで妊娠まで心配させられない。

夜、又、ベッドの下に手を伸ばして上に来る様に合図した。
暗闇とはいえど闇に目が慣れていれば、この手すらも隣の付き添いには見えるのかも知れない。
でも、どうせバレているなら今更隠してもしょうがない。
芳兵衛は何時からかパジャマを用意していた。
まるで付き添いさんのおばさん達と変わらない感じた。

今日はベッドをきしませてやった。
助平なことをしているのでは?と疑わさせるより、この際、していると明確にしてやれ。
態とギシギシ鳴らした訳では無いが、普通にに任せて鳴るなら鳴れという感じだ。
もうバレているという前提に立つと、随分楽なものだ。
セックスは回りに気兼ねしないでやるほうが矢張り気持いい。
高まりを迎えたが射精はしなかった。
芳兵衛には射精の有無は多分分からないだろう。
別に演技するつもりは無いけれど、いつも出しているのに止めたら変に思うかも知れない。

ベッドのギシギシは、必死に隠しても多少は鳴る。
少し気を抜けば深夜のことだ、間違いなくこの大広間を突き抜け廊下中に響き渡ったに違いない。
芳兵衛は女だからそれを止める事も出来ない。
ただ簸たすら音が止むのを待つしかない。
芳兵衛にはどにも止められない事を芳兵衛をする、これが芳兵衛を征服した者の醍醐味だ。
廊下まで響いているだろうギシギシのBGMサウンド、実に気持良かった。

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振られる度に、もう恋なんかと何度思ったことか。相手にされないのも寂しいけれど、引寄せられてからストンと捨てられるのはもっと痛い。振られる度に臆病になって、此れは恋では無かったのだと慰める。傷つかない偽りの恋しか出来なくなっても恋は恋、小さくても偽物でも恋は至福です。

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