失恋教室

９月７日、Yokoと真鶴海岸へ遊びに行く。

別に目的地はどこでもよかったのだけれど、標識にとあったので行ってみた。
Yokoは来た事があるような事を言っていた。
だれと？
そんな事は聞かなくても容易に想像できるから聞かなかった。

岬は真鶴半島先端に位置し、相模湾の西端になっている。
つまり、真鶴岬と三浦半島南端沖に浮かぶ城ヶ島を結ぶ線より北側の海域が相模湾という事だ。
此処では毎年７月の終わりに貴船まつりというのがあって、それは日本三大船祭りに数えられるのだそうだ。

突端にある三ツ石へ下りる遊歩道は柵が付いていたけれど、結構凸凹の大きい急な道で歩きにくかった。
その途中でYokoにキスしようという振りして手を引っ張った。
海岸まで下りてゆく観光客も直ぐ隣を下りて行くし、こんな人前でのキスは恥ずかしいからジュスチャーだけだ。

ところがYokoがそのジュスチャーをまともに受けたのでびっくりした。
外人じゃあるまいし、白昼堂々と人前でキスするなんて恥ずかしくてYokoだって出来る訳が無い。
そう思っていたのでびっくりしたし此方が恥ずかしかった。

人前でキスをしたのは初めてだ。
然し、女が堂々とキスされているのに男がおたおたしていれはみっとも無い。
”俺は平気だ”と思わせる為にも気を入れて足場の悪い坂道で踏ん張った。
Yokoは自分で自分の事を気が弱いと言っていたけど、木の弱い女が白昼堂々と人前でキス出来るのだろうか。

此処は真鶴、来ているのは大抵観光客だから、Yokoが知りあいに逢う可能性はあまり無いのかも知れないけれど、
言えから近くは無いとは言ってもYokoにとっては地元と言えば地元、知合いに遭わないとも言い切れない。
ふとどきにも夫ある身の人妻が夫以外の男性と真昼間に人前で濃厚なキスをする何て考えられない事だと仰天した。
Yokoはもう人に見つかってもいいとでも思っていたのだろうか。


伊東から峠に上がった。
折角海に来たのだから魚料理でもすれば良かったのだけれど、　先ほどの過激なキスに刺激されてBBQへ行きたくなった。
時間的にも昼飯時間は終わっていたので多分客もそんなにいないだろうと思った。
峠の中ほどより一寸上に上がったところにあるBBQ、韮山のそれとは違ってそんなに大きくは無い店だ。
BBQというのは割と好きだ。
食堂と違って個室だしゆっくり出来るし、何より女性に鍋奉行して貰うのが気持がいい。

結婚への憧れがあるとすれば、その一つは女房の手料理、料理と女房の体には何か一つの共通点がある気がする。
ＢＢＱは料理とまで言えるかどうかは別として、なんだか一寸ままごとの様な感じがして其れも楽しい。
子供の頃、幼馴染の昭子とよく”お母さんごっこ”というのをやって遊んだ。
地べたに茣蓙を敷いて玩具の包丁とかまな板でご飯を作って食べさせる女の子の遊びだ。
僕が入れられるのはお父さん役、役どころとしては単に座っているだけ、食事の支度が出来ると食べる真似をする。
赤ちゃんとか、子供もいて、其れは人形がやる役だが、其のお父さん役をやらせられるのが結構好きだった。

ＢＢＱでのメニューは鳥の腿肉と手羽、それに野菜。
別注文で、おにぎり、味噌汁、お新香、勿論酒類もあるが、大体そんなもので何処の店も大差無い。
座敷に通されて、ＢＢＱの材料が届くまでに一寸した時間がある。
その時間を利用してさっきの続きを。
力強くＹｏｋｏを抱き締めて濃厚なキス、やっぱりキスは人前でするより隠れてする方がいい。

濃厚なキスを繰り返し、一段落した処で丁度材料が運ばれてきた。
さっそく料理の開始。
本当は女にやって貰いたいのだけど、ついつい自分で並べてしまう。
その時自分がどのくらい浮かれているかが自分で分かるのも楽しい。
どれだけ気持よく網に材料を並べられるかというのは、どれだけ其の女を気に入っているかに比例している気がする。
早く料理を食べたいという気持は、早く女の体を食べたいという気持と並行している。

飽きた女とまでは言わないにしても、慣れ切った女だと材料を並べていてもそんなに楽しく無い。
料理も、どんなに美味しいのだろうと思うとわくわくするけれど、味が分かっている物はそんなに楽しく無いのと同じだ。
並べ終わると焼けるまでの間にまた暫しの時間がある。
その時間を利用してＹｏｋoを抱き寄せた。

Ｙｏｋｏは何故ミニスカートを穿いてこないのだろう。
何時も長めだ。
もう既婚者だから、若い娘と一緒の物は穿けないと思っているのか、それとも差別化なのだろうか。
或いは夫から露出を禁じられているのだろうか。
Ｙｏｋｏの妹はかなりの美人だ。
Ｙｏｋｏよりも痩せているけれど、その分手足が細くて長くて白い肌がミニスカートとよく似合う。
Ｙｏｋｏより乳房が大分小さいけれど、それ以外は問題無く綺麗で可愛いし清純なセクシーさがある。
その妹をＹｏｋｏは一番可愛がっている。
Ｙｏｋｏが大事に思っているのは一番が妹、二番がお袋、三番が猫なのだそうだ。
残念ながら上位三位迄は僕は入っていないけれど、夫も入っていないので、いい勝負なのだろうか。

ＢＢＱで女を抱く事は不可能では無いけれど、結構スリリングではある。
可能は可能だけれど、全裸にするのはかなり難しい。
勿論店員に見つかってもいいという気があればそれも可能だけれど、かなりの確率で見つかると思うからチョイの間が限界だろう。
一番安全なのは口でさせる事、ま、これなら９０％見つからないで出来る。

Ｙｏｋｏの長目のスカートはチョイと不便。
抱くならかなり全裸に近い状態までしなければ出来ないが、幸い今日は裾が広いスカートだから良かった。
それにしても何故ミニを穿いて来てくれないのだろう。
Ｙｏｋｏとしての都合があるのかも知れないが、僕にとってミニの方が都合がいい事位分かっている筈なのに。
それとも、抱かれるなら全裸にされてもいいと思っているのだろうか？

そうとも思えないが、そうとも思える。
その辺は一寸微妙、何とも言えない。
しかしデイトする以上はどこかでは抱かれるのだから、抱かれやすい服を着てくる位の思いやりも欲しい。
何処で全裸にされてもいいと思っているのなら話は別だが、ＢＢＱで全裸にされたら人に見られてしまうだろう。
それでもいいと言うならそれでもいいけれど、本当に見られてもいいと思っているとは思えないのだが。

網から煙が立って、肉を裏返すタイミングで、店の人が御握りと味噌汁を運んで来た。
丁度ピッタンコのタイミング、Ｙｏｋｏが肌蹴た旨とスカートの裾を整えて肉を裏返そうとした時に運んで来た。
ぎりぎりいっぱいのセーフ、もうちょっと早かったら、丁度昇天する時とバチリンコだったに違いない。

肉の裏返し以降はＹｏｋｏに任せた。
”御母さんごっこ”の再来だ。
結構雰囲気的には悪くない、実際に夫の為に料理も実戦しているのだろう、手つきも結構型に填まっていた。
ＢＢＱでは女の料理技術の査定は出来ないけれど、直感としては結婚してもそこそこ美味い料理を食べさせて貰えそうだ。
女の料理と女の体、どっちも美味いに越した事は無い。