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ライダー「啓子」

啓子は幡ヶ谷三人衆の邦子の従姉妹に当る。
啓子は邦子より一つか二つ年下、邦子は色々な人を紹介してくれたが親戚は初めてだった。

啓子は山で見かけた三人衆の障子に憧れ、それで最初に障子に紹介され、その序に僕も紹介されたという事らしい。
聞いてみると、障子を見かけた滝谷の前にも槍が岳で出逢っているらしく、不思議な縁もあるものだと思った。

初めて啓子を紹介された時、兎に角か細い子という印象、髪が長く清楚で色白、とても山に登れそうも無い子だった。
紹介した邦子がまた、人一倍頑丈な身体の持ち主だから余計にそう感じたのかも知れないが、邦子は啓子を結構体力はあると言っていた。

そんな邦子は啓子が、或る夜、冬季一の倉集中の陣中見舞いをかねて家に遊びに来て泊まって行った。
其れが啓子に会った二度目の時だが、翌朝、寝ぼけて誰かと間違って啓子と特別な仲になってしまった。
其れはあくまで偶発、啓子にとっては事故としかいい様の無い出来事だったが、其れ以来、啓子は言わば”第二の彼女”的な存在、
”影の女”的な位置で付き合う様になり、翌年JRCがヨーロッパ遠征に出かけるのを契機に僕がJRCを脱退する迄続いた。

啓子とはJRC退会で自然に別れていたけど、てTCCに入った頃に又復活、今度は山の付き合いでは無く、
啓子のバイクに乗せて貰って、アチコチへツーリングに行った。
啓子はスキーも上手いと聞いていたけど抜群にバイクの運転がが上手かったので、気持がよかったのだが、大学の卒業と共に自然に別れた。

邦子とは卒業後も偶に飲んだり山に行ったが、啓子は未だ学生だったからか会う事も無かった。
その後とてつもなく長い歳月が流れ、そして偶然に会うことになった。
友達金坊の奥さんの早苗さんが、実は昔からのバイク繋がりだったらしく、雑談の中で啓子の話が浮上した事から、みんなで会おうという事になった。
僕としては懐かしい反面会いたく無い気持もあって、再会には消極的だったけれど、早苗さんが強引にセットしてしまって、
成り行き上会わない訳にはいかなくなった。

何十年振りの再会? 数えるのも気が遠くなりそうな歳月を経ての再開なのに、意外にもそんな歳に見えなかった。
その飲み会で、今度みんなで泊まりでツーリングに行こうという話になって、なんとなく又、啓子との付き合いが始まる予感がした。

その飲み会の次だったか、次の次だったか、啓子と二人で会った。
デイトというには照れくさい気持もあったけれど、二人で会って食事に行ったのだからデイトには違いない。
そしてその夜の内に二人は昔と同じ様に付き合う事になった。

その後、啓子との付き合いは結構順調で、毎晩のようにしたメールのやりとりは楽しかった。
定例会と称して、毎週決まった曜日に彼女はマンションに遊びに来てひとときを楽しんで帰って行った。

一、二年、そういう関係が続いた今年のGW,啓子は夫婦で欧州へ旅行に出かけた。
旅行の途中の旅先からもメールをくれたりしていたけれど、その交信のやり取りに何らかの欠陥があって、以来付き合いは止まった。
メールに問題があったのだと思うけれど、旅先で夫婦間に何かが生じたのかも知れない。
交際が夫に知れた? その事も含めて互いに音信不通のまま現在に至っている。

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Author:ひろあき
振られる度に、もう恋なんかと何度思ったことか。相手にされないのも寂しいけれど、引寄せられてからストンと捨てられるのはもっと痛い。振られる度に臆病になって、此れは恋では無かったのだと慰める。傷つかない偽りの恋しか出来なくなっても恋は恋、小さくても偽物でも恋は至福です。

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