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「遥かなる山の彼方に」 1 快刀乱麻(9)

新人合宿の七月までにはまだ時間はある。
 其れ迄に天城と庭山の説得をしなければならない…、晶子はそれを天命と思いガンとの谷川から戻って直ぐ蕩揺を振り切って再び地下室へと向かった。

 正規のクラブである拳法部に入ったらもう山へは行けないだろう。
 天城もその位の事は知っている筈だ。
知っていて拳法部に入った以上はもう山を止める気だとも思える。
山を止めると言う事は晶子ともガンとも旧友の邦子とも離れる事になるが、晶子にはそれが天城の本意だとはどうしても思えない。
 彼は心と体を違う方向へ向かって歩き出させようとしている・・、晶子はそう考え其れを止めたかった。

 晶子は彼が心と体を違う方向へ動かそうとするのを自分のせいだと思っていた。
去年の夏、二人の高校時代最後の山に選んだ穂高で語りあった二人の夢。
暮れ行く滝谷の残照の中で自らの内側を晒す様な天城の話を聞いた時、彼女は今迄と違う自分達の新しい世界の到来を感じた。 
 だが残念ながら天城の夢は適わなかった。
 天城は運命に逆らい、自分をも裏切った。
しかし天城の運命への裏切は自分に原因があるとも晶子は感じていたのだった。

 晶子はJRCへ入会を誘う前に天城を二人の山に連れ出そうと狙った。
槍ヶ岳は二人が初めて登った北アルプスの頂、初めて穂高に近づいた山だからだ。
 晶子はアルピニズムに親炙(しんしゃ)した残照の滝谷での新しい世界への手応えに賭してみようと思ったが、ガンは槍ヶ岳に反対らしく、自分が誘い出すと言う。
 ガンは必ず七月迄にJRCへ入会させるから任せておけとも言っていた。
 確かに天城を自分より知っているガンに任せた方が手堅い気もするが、天城が別の道に歩き始めたのは自分のせいだから自分で動きたかった。晶子は惜別すらも自らへの試練とまで思い詰めて地下室への階段を下った。

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Author:ひろあき
振られる度に、もう恋なんかと何度思ったことか。相手にされないのも寂しいけれど、引寄せられてからストンと捨てられるのはもっと痛い。振られる度に臆病になって、此れは恋では無かったのだと慰める。傷つかない偽りの恋しか出来なくなっても恋は恋、小さくても偽物でも恋は至福です。

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