2ntブログ

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

-件のコメント

コメントの投稿

新規
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

-件のトラックバック

トラックバックURL
http://siturenkyousitu.blog.2nt.com/tb.php/21-b12b89c6
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

「遥かなる山の彼方に」 1 快刀乱麻(10)

地下の道場、何時来ても漂う蛮境の匂い。
 男達の叫び声と共に防具を纏った体に蹴り込む音が地下室に響き渡る。
 窓からそっと覗く晶子の目に何人もの異様な風体が飛び込んで来た。
 質実剛健と書かれた大きな額の下で数人の男達が罵声を浴びながら蹴り合い殴り合っている。 
 中央で乱取りをしている三組を囲んで道場の縁に総別して二十人位が座しているが、その一人一人を探してもどれが天城だか分からなかった。
天城はどれだ、何処にいるのだろう。
 乱取りをしている三組の内、二組は激しくぶつかり合っていた。
 恐怖からか、或いは蛮勇を引き出す為なのか訳の分からないすっとんきょうな声を出し合っていた。
 もう一組の方は距離を置いて睨み合っているだけだ。其の一人は左手を前に出し右手を腹部に当てて半身に構え、もう一人の方はやや半身で両手をダラリと下ろしたまま相手との距離を測っている様だ。
 縁に正座して罵声を浴びさせている連中は激しくぶつかり合っている二組に向けられているらしく、睨み合ったままの組の方への声援は無い様だ。
 睨み合い組のダラリと腕を下ろしたままの男の構えは隙を見せて後の先を狙って誘っている様にも見えるし、相手との実力差を誇示する余裕の様にも見えた。

 天城は何処だ、何処にいるのだ。
 激しくぶつかり合っていた二組の背かっこうは天城に似ている。
その四人の中の誰かかも知れないと思ったその時、睨み合い組の両手をダラリと下ろしていた男が突然ツッッと前に進んだ。
中段に構えていた相手の男はその速度について行けず、前にしていた左足を後ろに引くのが精一杯だった為に二人の距離が急に詰まった。
その瞬間、両手ダラリ男の体がクルリッとフィギュアスケ-トの様に回ってその右足が風を切って中段に構えた逃げ遅れ男の顔面に飛んだ。
回し蹴りだ。蝶が舞うが如く美しく鮮やかな大技だった。
 「危ない!」
晶子が瞬間に小さな声で叫んだ時、正面で半跏趺(はんかあぐら)坐(ざ)していたリ-ダ-らしき男達も一緒に「鳴呼!」と叫んだ。
 その蝶の舞いの瞬間、逃げそびれた相手の男の右の拳甲が外反したのを晶子は見取った。
 天城だ……。
晶子は天城の空手道場での練習を何度も見ていてその癖を知っていた。
 「危ない!」と晶子が瞬間に叫んだのは風を切って飛んだ右足に蹴り倒される逃げ遅れ男にでは無く、逃げ遅れ男に右拳を外反させた相手に向かってだった。
 晶子は松の木板を十枚重ね割りする天城の右拳の凄さを知っていた。
 勝負は一瞬にして終わった。

0件のコメント

コメントの投稿

新規
投稿した内容は管理者にだけ閲覧出来ます

0件のトラックバック

トラックバックURL
http://siturenkyousitu.blog.2nt.com/tb.php/21-b12b89c6
この記事に対してトラックバックを送信する(FC2ブログユーザー)

Appendix

プロフィール

ひろあき

Author:ひろあき
振られる度に、もう恋なんかと何度思ったことか。相手にされないのも寂しいけれど、引寄せられてからストンと捨てられるのはもっと痛い。振られる度に臆病になって、此れは恋では無かったのだと慰める。傷つかない偽りの恋しか出来なくなっても恋は恋、小さくても偽物でも恋は至福です。

ノーマルカレンダー

<< 09
2024
>>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -

クラシック・アナログ時計

カテゴリ

最新記事

月別アーカイブ

最新トラックバック

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード