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一縮二飯 (犬女)

修善寺から戻る途中、長岡の「餃子館」に寄って餃子を買った。
本当は腹が減っていて、余程湯麺を食べて行こうかと思ったのだけれど、若しかしたら幸子が晩飯を用意してくれている
かも知れないと思って我慢した。
用意してくれていなければ、チョト悲しいものがあるけれど、それなら餃子を食べればいいと思って我慢した。

幸子の家に着いたのは若しかしたら凄くいいタイミング??
まるで、夕飯を狙ってきたかの様に、余りにもばっちりのタイミングなので、一寸恥ずかしかった。
然し、ちゃんとお茶碗が二人分食卓に在った。
僕の分だとは思ったけれど、若し違ったらあさましい。
本当は直ぐにも食べたい位にお腹が空いていたのだけど、勧められるまでじっと我慢した。

おかずは刺身、冷やっこ、馬鈴薯の味噌汁、アボガトのサラダ、ピーマンの肉炒め、どれも僕の大好物だった。
其れは只の偶然、幸子が僕の好物を用意してくれた訳では無い。
幸子が自分の好みの物を作ったに過ぎないのだけれど、余りにも好みが一致していたのでまるで僕の為に作ってくれた
みたいな感じがして嬉しくなってしまった。
お茶碗が二膳、その並び方がなんとなく新婚家庭という感じ、幸子と結婚したら毎日こんな感じなのだろうか。
そんな事を想像して一人でニヤニヤしていた。

別に幸子との結婚を本気で考えた事は無いけれど、幸子でもいいのではないかと半分その気になって来た。
幸子の料理をそんなに何度も食べさせて貰った訳では無いけれど、それでも結構気に入っている。
馬鈴薯の味噌汁は特に気に入った。出汁が入り子、其れと合わせ味噌を使っているらしい。
少なくとも幸子は料理が好きだという事は十分理解出来た。

幸子に妻としての不足は何があるのだろう。
料理、掃除、洗濯は問題ないし、特に料理の好みが一致しているのは結婚するには嬉しい限りだ。
優しさ、妻としての優しさも十分にある気がする。

妻にする女の条件、そんなものは言いだせば限が無い。
だから、基本的な要件としては「才長けて見目麗しく情けあり」な女性を理想にしているのだけれど、中々そういう人は
周りにいないし、居ても相手にして貰えない気がする。
そうなると、感情の問題というかフィーリングが一番大事な気がする。
然し、それはどちらかと言うと妻では無く彼女の場合、妻にする場合は、身体、特に健康さが一番大事な気もする。
然し、それよりも愛情、信頼の方が一番な気もするし、仕事とか生き様、ビジョンの方が大事な気もする。
経済力とか家庭環境の一致とかの方が大事だとも思うし、セックスの相性の方が大事だとも思う。
結局、色々あり過ぎて、妻にする理想の女性というのはこの世には存在しないのかも知れない。

夫婦というのは子供を産み育てる為に存在するのだと思う。
それだけの為にあるのなら、そんなに難しい条件では無いと思うのだが、其れが結構奥が深い気がする。
結婚というのは論理矛盾を引き起こさない為に個々沢山の事をチェックしないといけないと思うけれど、探して
探し回っている内にムスターハになってしまう気もする。

自分の好みの女であっても、子供の好みの母親になるとは限らないし、両親の好みの嫁になるとも限らない。
子供や両親にとって良くても、自分に良くない女という事もあるだろうから、嫁探しというのは難しい。
結局ポールニューマンが言う様に、結婚は乗りでするものだと言うのが正しいのかも知れない。

幸子が家庭能力の高そうな女である事にこの頃気づいたけれど、だからといって幸子は家庭的な女だという訳では無い。
幸子は芸術家的なセンスが高そうだが、芸術家的と家庭的とは両極な位置にある訳で、其れが両立する事は些か考えにくいのだけれど、両極なセンスを持っている様に感じるのは恋に盲目になってしまっているのかも知れない。
然し、恋に溺れているという気もしない。
幸子とは結構冷静に付き合っていると思うから、盲目的に評価している事は無い気がする。

幸子も又、ミステリーな女だ。
若しかしたら周囲で一番ミステリーな女性かも知れない。
家庭的な安定的な女に憧れを持つ一方で、ミステリーな女、人生に刺激的な女にも憧れる。
ミステリーな女と言えば陽子もミステリーだし、昔の白馬のしのぶさんも、もっと昔の西島先輩も、更に昔のスケ殿も
ユミコもミステリーな女だった。
分かりやすい女もいいけれどミステリーな女も捨てがたいから男は欲張りなのかも知れない、然し女も又欲張りだ。
嫁さん探しは友達探しより、遥かに難解である事は確かな気がするが、女は婿さん探しをどう思っているのだろう。

夜、幸子は例に寄って例の如きで、パンツ一丁だった。
この、パンツ一丁で寝るというのはどんな心理なのだろう。
只の習慣? 多分そういう事なのだろうけれど、少なくとも男の客人を迎えているのだから多少は意識はあるだろう。
それとも男として認めていないのか? デカ犬のもっとデカイ奴という位にしか考えていないのだろうか。
陽子は泊りに来たりしないのだろうか? 陽子が泊る時もパンツ一丁で寝るのだろうか?
陽子と幸子は同性愛の関係にある?? まさかとは思うけれど、あり得ない話では無い。
陽子が泊って行ったとしたら、それでもパンツ一丁で寝たそしたら、そうなる方が寧ろ自然?そんな気もした。
デカ犬と裸で寝ているという事だけならまだしも、幸子も陽子も身体に触れられる喜びを知っているのだから。

昼間、Saeと一回、つい先ほど夜にも一回放出したばかりだから欲望は無かった。
然し、Saeとは明らかに違う肌の女が裸で肌を寄せて隣に居るとなると、触れないまま眠るのは難しかった。
幸子は期待していたかどうかは分からないけれど、当然、抱かれる予想はしていただろう。
予想はしていただろう望んでいたかどうかは別問題、然し望んで居た方がいいか悪いかも又別問題な気がする。

同性愛の女と結婚出来るか? 其れはかなり微妙な気がする。
獣淫愛の女と結婚出来るか? 其れよりはいいとは思うけれど、逆に同性愛よりはいい様にも思える。
異性愛の女性ならいいのか? そう思うと同性愛や獣淫愛の女の方がいい気がする。

妻にする女、其れは無意識の中に処女だった女という観念が存在する。
然し人妻であるYokoに対しては処女では無かったという事を気持の中では許している。
現に、Yokoは今夜も夫に抱かれているかも知れないのに、そんなYokoを明日も抱きたいと思っているし、
Yokoとの結婚も否定していない。

確かに他の男に抱かれた女、他の女に抱かれた女、他の獣に情交された女に対しては何かの拘りはある。
それは一体何か? そこの辺は今一つクリアーにならないのだが、自分だけしか知らない女の方が安心感があるという
自己保全的な感覚なのかも知れない。

どういうのだろう、妻にする女が妻にしてから他の男に抱かれる方が須磨にする前に抱かれていたよりいい着なする。
普通は逆だろうし、逆の方が普通だし正常な考え方だと自分では理解しているのだが、汚れた女を妻にするより、
妻にした女が汚される方が案外平気な気がする。

そういう感覚は正常じゃ無いから、先ずそこの処を改めないと嫁さがしは駄目かも知れない等と考えながら幸子を抱いた。
幸子は基本的には大人しい女だと思う。
それは性格でもあるけれど、口数も少ないから騒音感が無い、そこの処がSaeとは大分フィーリングが違った。

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振られる度に、もう恋なんかと何度思ったことか。相手にされないのも寂しいけれど、引寄せられてからストンと捨てられるのはもっと痛い。振られる度に臆病になって、此れは恋では無かったのだと慰める。傷つかない偽りの恋しか出来なくなっても恋は恋、小さくても偽物でも恋は至福です。

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