失恋教室

会社の帰り会社の近くの駅で待ち合わせた。
大阪の繁華街へ行ってみようという嗜好だ。
折角大阪迄来ているのだから、何処か思い出になる処へ行こうと、何処がいいか聞いたら、
あなたに連れて行って貰える処なた何処でも思い出になりますとなんとも優秀な答えに感動。
心斎橋とかの有名な処がいいと思っていたのだけれど、お任せしますの一言。
そう来られるとお任せされる程大阪に詳しい訳ではない。

偶には南や北のスナックには行ったけれど、それ以外には夜の大阪は全然知らない。
大阪赴任ではあるけれど、半分以上は市外というか県外の仕事、北は滋賀から南は和歌山、西は広島、
四国に行く事も多く、近場でも神戸辺りが多く大阪市内の仕事は意外に少ない。
然し、奥さんからすればそういう言い訳は通用しない。
大阪に住んで大阪に勤めているのだから大阪の街は知っていて当たり前、処が僕が知っているのは
マンション近所の飯屋と会社の傍の麻雀屋の辺りだけ、南や北のスナックのスナックにしても、
上司に連れていって貰うだけだから一人だと行きつけるかどうかも怪しい程度。
せいぜい頑張っても道頓堀まで往けるかどうかというレベル、とてもじゃないがお任せされるのは無理。
何処か行きたい処は？と聞いて、知らない地名とか場所を言われたら困っただろうけれど、お任せも困った。

然し気分は大阪ラブソデイ、西に行こうか南に行こうか、夜の街を彷徨ってみるのもいい感じ。
どこでもいいといわれるのも困るけれど、どうせなら一生忘れられない刺激的な処へ行って刺激的な事をしようか？
と言ったら、まだ刺激的なことをされるのですかと奥さんが言う。
”まだ”とは何だ？、”される”とは何だ？
”まだ”とは”更に”という意味かとしても”される”という受動態用法は何を想定しているのだろう？
まさか尊敬語では無いだろう。
このセンテンスを繋げると”何処か刺激的な処に連れて行かれて、今までより刺激的な事をされる！”と解釈できるが、
其れが何を想定しているのか、実に分からない用法だった。

奥さんに、たこ焼き屋に行って死ぬまでタコ焼きを食べるというのはどう？と聞いたら、結構喜んでいた。
一生忘れない刺激的な思い出になるには違いないけれど、奥さんの想像した事とは大分違ったに違いない。
阪急の南方駅の傍に美味しいタコ焼屋がある。
会社の近くなので、東京から来た社員達をよく連れて行く店だが、大阪の社員同志で行く事は無いから
安全ではある。
誰かに見つかっても奥さんの顔を知っている者はいないから何とでもごまかせるから問題は無い。
とりあえず、小腹を詰めてから賑やかな処に行こうという事になった。

その朝、出かける時に奥さんは何を着て行ったらいいのかと聞いた。
そう聞かれても困るし、余り派手な物でも期待される様な処に連れて行けない事になっても困る。
何でもと答えるしかないのだが、奥さんが浴衣はどうかと言ったので助かった。
其れにそういう時様に買ったのだし、来て見せてくれるというのが嬉しかった。
只、個人的な好みとして、浴衣にパンツのラインが見えるのはいただけない。
ブラの線は見えにくいからいいとしても、パンツの線が見えると折角の浴衣姿も幻滅してしまう。
で、浴衣は嬉しいけどパンツの線が出ない様にね！と言ったら、分かっていますと言われた。
それってノーパンという事？？？よく分からないけれど、若しかしたらという期待、それで待ち合わせの時間が
実に楽しみだった。

たこ焼は奥さんが美味しいと言って喜んでいた。
名物に美味い物無し！というけれど、そのタコ焼屋のは、結構自信があったし、喜んでもらえて嬉しかった。
南方からはタクシーで道頓堀へ行った。
大阪を代表する繁華街、グリコのイルミネとかがある派手なネオンの街だ。
浮世小路の食堂に入って串カツを食べた。
これも結構名物、串カツは通天閣の「だるまや」が美味かったけど、ここの串カツも結構行けた。
そう言えば天王寺の「やまちゃん」というたこ焼き屋も美味かったなと思いだした。
考えてみると、知らない割にはチョコチョコといろんな店に行っている気もする。
マンションからバイクで直ぐ行ける処に大阪では有名らしいピンク街があって、その界隈の食事処になんかは
結構行っていた。
まあ、女性を案内する街では無いから今回は連れてはいけないけれど、其処にも美味い店が結構あった。

奥さんに、明日にでも天神橋筋商店街にいってみたらと勧めた。
其処は神戸三宮のガード下と並んで、結構気に入っている商店街、往けども往けども終わらないアーケード、
何しろ1丁目から6丁目までずーと商店街、横浜の藤棚の商店街も長いけれど天神橋は多分日本一長いのではないだろうか。
三宮のガード下は東京で云えばアメ横、天神橋にしても三宮にしても丸一日十分に過ごせるし、兎に角安い。
天神橋に行ったら「カンティプール」というネパール料理に行ってみたら？と言ったら奥さんが喜んでいた。
奥さんはカレーライス大好き人間、そう言えば新梅田食道街も結構よかったと言ったら興奮していた。
大阪は”食い倒れ”と言われるだけあって結構食堂が多いし、その分美味い店も多い気がする。
但しラーメンだけは美味い店が無い。

道頓堀の周辺をそぞろ歩いた。
うたの文句じゃないけれど、本当に大阪の夜の街ってネオンが華やかで恋の街という感じがした。