失恋教室

５月３日
京子と勇と新宿で待ち合わせて三つ峠へ向かう・

５月４日
ダルマの小屋を後にして、「沢から行かないか？」と提案。
勇にあっさりと却下された。
いつも尾根からばかり登っているのでバリエーションのつもりだったけど、勇にとっては初めての三つ峠。
と、言うより、勇は山男では無いから沢の味が分っていないのかも知れない。
人間関係はこうした些細な事でこじれたりする。
男同士でも男女でも同じだろう。

愛情関係とか肉体関係があれば些細なことに気がつかない。
それよりも大きな報酬がある事を知っているから、その報酬に比べるに値する以外は自動的に無視される。
愛情関係とか肉体関係が生まれたり破壊される時のあの大きなエネルギーに比べれば、他の事は何でも些細なことに過ぎない。

勇君とは、愛情関係とか肉体関係は無いから、尾根か沢かの議論でも大きな要因になりかねない。
勇君は大学の同級生でもあるが高校の先輩でもある。
つまり僕より年上であるから、同じく僕より年上の京子を紹介しようというのが、本日の狙い。

勇君とは特別な関係がある訳では無いが、僕達の事を怪しいと思っている級友も居る。
勇君とは手を繋いで登下校したりするから、ホモだと思っているのかも知れない。
ホモにも精神的なホモと肉体的なホモがあるらしい。
肉体関係の方は想像しやすいが、精神的ホモというのはどんなのだろう。
多分友情では無く、愛情関係をいうのだと思うけどイメージしにくい。

昨夜見た夜富士が綺麗だった。
おおらかな富士、人間の些細ないざこざが馬鹿げてみえるけれど、あの富士も人を殺す。
いざこざのレベルではない。　松囲君もあの山でで殺された。
そう思うと、いざこざだけで済んでいる人間の方が、ずっと穏やかなのかも知れない。

白雲荘に二人を置いて屏風に遊びに行った。
二人が出来上がろうとできあるまいと構わない。
京子に手を付けた訳では無いから、正々堂々と紹介しためでの事、あとは知らない。

河口湖に下る途中の草むらで一時間位昼寝した。
やっぱり富士はでかい。

１１：００　また下り始めた。
舗装道路に出た。
売店でアイスボンボンを買って、かじりながら船着場に向かった。

今日、１０：１８　富士山で二人亡くなったそうだ。
丁度、尾根で昼寝をしながら富士を眺めた頃の時間だ。
穏やかに見えるけど、やっぱり富士は恐ろしい山だ。